はじめに:好きなことが見つからなくても大丈夫
「好きなことを仕事にしよう」「得意なことを伸ばそう」と言われると、自分の好きなものや得意なことを一生懸命探してしまいます。しかし、何年探しても、これだという手応えがない人もいます。
好きなことを仕事にしたのにうまくいかない。得意なことはあるのに結果につながらない。そんな時、「才能がない」と考えてしまうかもしれません。
才能がないのではなく、探す物差しが違うだけかもしれません。好きと得意だけでは才能が見つからない理由と、本当の才能が生きる場所を紹介します。
1. 好きはアマチュアの基準になりやすい
プロ野球の選手は、毎日野球が好きだから練習しているのでしょうか。雨の日も、体が痛い日も、気分が乗らない日も、グラウンドに立ちます。プロにとって大切なのは、好きか嫌いかではなく、求められる結果を出せるかどうかです。
好きなことは趣味の基準としては素晴らしいものです。好きな時にやり、嫌になったら休めます。しかし仕事には相手がいます。気分に関係なく、一定の質で届けることが求められます。
好きという気持ちは変わります。子どもの頃に夢中だったものを、今も同じ熱量で好きとは限りません。変化するものを土台にして仕事を決めるのは、砂の上に家を建てるようなものです。
映画を見るのが好きでも、映画を作る才能があるとは限りません。料理を食べるのが好きでも、料理人に向いているとは限りません。お客さんと作る側では景色が違うからです。
ゲームが好きでゲーム会社に入った人が、締め切りに追われてゲーム自体を嫌いになることもあります。その人が悪いのではなく、「好き」だけで場所を選んだことが原因かもしれません。
好きだから上手になるのではなく、才能がある場所でうまくいくから好きになる。好きは原因ではなく、結果である場合もあります。
2. 得意はAIとの比較で不安定になる
これまで得意なことは、周りの人と比べて決めるものでした。クラスで計算が速い、職場で文章を書くのがうまい。それだけでも十分な武器になった時代があります。
しかし今は、比べる相手が隣の人ではありません。文章、翻訳、計算、資料作成、要約などをAIがこなします。人より少し得意というだけでは、成功の決め手になりにくいのです。
得意と才能は同じではありません。得意は練習で身につけたスキルであることが多く、周りと比べる相対的なものです。一方、才能は特定の場所に立った時に結果として表れます。
Excelが得意でも、その才能が経理、営業、人に教える仕事のどこにあるのかは分かりません。「分析力が強み」と診断されても、どの職業で結果が出るかまでは教えてくれません。
得意を探すと道具の話になります。才能を探す時に見るべきなのは、その道具を持って立つ場所です。
3. 才能は場所とタイミングで見つかる
才能は、自分の心の中を覗き続けても見つからないことがあります。正しい場所に立った時、初めて結果や周りの反応という形で外に現れるからです。
ひまわりの種を手のひらに乗せて眺めても、どんな花が咲くかは分かりません。日当たりのよい土に植え、季節が来て初めて、大きな花を咲かせます。土が場所、季節がタイミングです。
住む場所を変えると、出会う人や情報、チャンスが変わります。地方では珍しくない仕事が都会で貴重になり、都会の常識が別の場所で価値になることもあります。職場や付き合う人、発信場所を変えることも同じです。
タイミングも重要です。どれだけよい種でも、真冬にまけば芽が出にくい。時代の流れや年齢が合った時、才能が大きな結果を生みます。
私自身、テレビ局のアナウンサーになるまでに26社から断られました。それでも27社目で内定をいただきました。26社から断られたのは、才能がなかったからではありません。その場所とタイミングが合っていなかっただけです。
入社4年目に、自分のスイートスポットは作家と起業家だと言われ、会社を辞めました。その後、累計105冊、230万部の本を出版し、年商1億円の企業をつくることができました。
スイートスポットを探すための質問
人には、生まれつきスイートスポットと呼ばれる職業が3つあると考えられます。スイートスポットとは、ラケットやクラブでボールが最もよく飛ぶ場所です。そこに当たれば、同じ力でも結果が大きくなります。
好きか得意かを考える代わりに、次の質問をしてください。
「私は、どの職業に立てば成功するのか?」
「どの場所なら自分は求められるのか」「今は動くべきタイミングなのか」と考えましょう。自分の内側だけで答えを探さず、実際の結果や周りの反応を観察することが大切です。
まとめ:物差しを変えれば才能は見つかる
好きと得意は、気持ちや現在のスキルを測る物差しであり、才能そのものではありません。
仕事は才能で選び、好きは趣味として楽しむ。得意に固執せず、場所とタイミングを変えてみる。今、才能が見つからないのは、才能がないからではありません。探す方向が内側に向きすぎているだけかもしれません。


