「発祥国だから、一番うまくやれる」
私たちは、ついそう考えてしまいます。自分が長く続けてきた方法。過去に結果が出たやり方。昔から受け継がれてきた習慣。これらには価値がある一方で、いつでも、どこでも正しいとは限りません。
日本とフランスの柔道指導・安全性の違いを扱った研究を紹介する投稿が、Xで広がりました。資料では、フランスの柔道人口は50万人を超え、日本のおよそ4倍とされています。
柔道は日本で生まれた競技です。それにもかかわらず、競技人口や指導方法、安全性の面で、フランスから学べる部分があるかもしれない。この事実は、発祥国であることと、現在のやり方が最善であることは別だと教えてくれます。
昔うまくいった方法が、今も正しいとは限らない
過去に成功した方法には、強い説得力があります。
「このやり方で勝てた」
「自分はこの方法で成長した」
「昔からずっとこうしてきた」
こうした経験は、次の人を育てるときにも役立ちます。しかし、成功体験をそのまま相手に当てはめると、相手の状況や時代の変化を見落とすことがあります。
昔は情報が少なく、厳しい環境に耐えることが成長につながったかもしれません。今は、体の安全を守りながら、長く続けられる方法を選ぶほうが成果につながるかもしれません。
過去の方法が間違いなのではありません。過去の方法を、現在の目的に合わせて見直すことが大切なのです。
発祥国でも、外から学ぶ必要がある
自分たちが生み出したものほど、外から学ぶのが難しくなります。「本家だから分かっている」「自分たちが教える側だ」と思いやすいからです。
しかし、発祥国だからこそ、外の変化に気づきにくくなることもあります。別の国が、より安全に、より多くの人が続けられる仕組みをつくっているかもしれません。
フランスの柔道人口が日本のおよそ4倍とされるなら、フランスには柔道を広げ、続けてもらうための工夫があるはずです。日本と同じ方法でないからこそ、参考になる部分があります。
外から学ぶことは、自分たちの価値を否定することではありません。大切なものを、次の時代へ残すための選択肢を増やすことです。
成功体験が、成長を止めることがある
成功体験は、前に進む力になります。一方で、「自分は正しい」と思い込む理由にもなります。
過去にうまくいった人ほど、今の状況でも同じ方法を使おうとします。けれども、相手も環境も変わっています。自分の成功体験が、相手にとっては負担になることもあります。
大切なのは、「昔は何がうまくいったか」だけでなく、「今、相手に何が必要か」を考えることです。
指導する立場なら、相手が安全に続けられるかを確認する。組織を運営する立場なら、昔のルールが今の目的に合っているかを見る。自分の働き方を見直すなら、過去の成功が今の自分を縛っていないかを考える。
過去を捨てるのではなく、使い方を変える
過去の成功体験を手放すとは、過去を否定することではありません。そこから得た原則だけを残し、方法は更新することです。
たとえば、「努力は必要」という原則は残しながら、努力の量だけでなく、安全性や継続性も重視する。「基本が大切」という考えは残しながら、基本の教え方を相手に合わせて変える。
このように、原則と方法を分けると、過去の価値を活かしながら、今に合った形へ進めます。
スイートスポットは、今の自分に合う場所を探すこと
人は、生まれつき3つの職業を持っていると言われます。才能、情熱、価値観が重なる場所です。私はそこを「スイートスポット」と呼んでいます。
スイートスポットを見つけるためには、過去の成功に固執するのではなく、今の自分の能力がどこで活きるかを見直す必要があります。
今日から、次の3つを考えてみてください。
- 過去に成功した方法のうち、今も残したい原則は何か
- 今の相手や環境に合わせて、変えるべき方法は何か
- 外から学ぶことで、もっと活かせる能力は何か
発祥国だから、経験者だから、過去に成功したから。それだけで、今の最適解が決まるわけではありません。
過去の成功体験を正解として握りしめるのではなく、次の成長に使える材料へ変える。そこから、今の自分にしかできない方法が見えてきます。














